その中で1人立場の違うキャラが登場しています。
それが中学一年生にして万原中学レギュラーの森脇 曖奈。

慕や閑無たちと対局させ、実力差を見せつけたのは、
とても小学生には見えない怪物級な選手が集う全国編は、あくまでも小学生という枠組みの中での視点であって、上の世代には更なる高みの世界があることを示唆しています。
しかし単に強いだけの上級生ならば、中高に進めば後々にいくらでも現れるのに、
小学生の段階から登場して、直接絡むことのない慕たちと面識を持つ意味とは何か。
注目すべきは悠彗の先輩という設定です。
曖奈と悠彗は同じ地区ですから、来年は悠彗も万原中へ通い、同じメンバーになります。
以前より強くなったはやりんもまた松江市内の中学へ進み、
それぞれが別々の中学へ通うことになります。

ここに「慕・閑無」「はやりん」「悠彗+曖奈」という中学生編での三つ巴の構図が成り立ち、
曖奈は実力的に劣る悠彗の底上げとして、3勢力のパワーバランス的な存在になるわけです。
彼女が「花形は団体戦」と言っている事と、悠彗と同じ学校になる設定はつまり、
中学生編以降は団体戦を中心に描かれることになると読み取れます。
杏果・玲奈、陽葵の3人も引き続き慕・閑無の中学メンバーとして出番が期待できそう。
ただ、シノハユは本編と異なり、闘牌よりも主要キャラ達の物語を軸に進められており、
個人戦を小学生編で描いた事と、団体戦はクライマックスをインハイに定めているので、
インターミドルの全国大会はバッサリとカットされ、
中学生編は各々の成長の再認識として、3勢力が相まみえる地方予選決勝で終るかもしれません。
そして物語は高校生編へと移り、
激闘を繰り広げた3勢力は、朝酌女子へ入学して同じチームとして再会を果たす。
慕・閑無・はやりん・悠彗。
28歳のはやりんが友達の旅館で若さを保っているエピソードをみるに、
長い付き合いとなる杏果も閑無の世話焼きで朝酌女子に進むでしょうから、
この5人で晴絵やすこやんと対峙する準決勝へ挑む展開となりそうです。
しかしながら、朝酌女子は毎年5人の特待枠のある強豪校で、部員数がとても多く、
先輩達も実力者揃いですから、シノハユ世代全員が1年から即レギュラー入りするのは難しいはず。
激突のインハイまで約2年の空白期間が生じることになります。
一方、森脇曖奈には2択の進路があります。
島根県の強豪校は、朝酌女子と粕渕高校の2校でどちらにも寮がある。
もしも粕渕へ進めば、慕たちの強敵として登場するも、引き立て役のように敗れ去ることになる。
けれど彼女が泡沫として終るとは思えない。
おそらく朝酌女子へ進むはずです。

なぜなら「一番輝くのは高3のインハイの夏」という学年と季節まで定めた明確な目標があり、
慕たちの運命の一戦はその翌年ですから、互いに障壁となる可能性は低い。
むしろ先輩として慕に影響を与える存在となるのではないか。
牌にかける青春の集大成となる高3の夏。
千里山で語られていた「インターハイで最高潮の力を発揮する3年生」同様に、
ラストステージという山の頂に花を咲かせ、美しく輝く曖奈の姿は、
ベンチから声援を送る後輩の慕たちの心を震わせることでしょう。
小学・中学・高校と、1歩先の世界を駆け抜けてきた先輩の背中、
その彼女が振り返り、次はあなた達の番よ。とバトンを手渡して卒業してゆく。
託された想い、照らされた道筋。
負けても楽しいゲーム、母を捜す手段、母の姿勢をなぞり、好きだといってくれた笑顔でうつ。
これまでは母と自分の為の麻雀でした。
杏果らに支えられた閑無が、真深と出会ったはやりが、慕たちが卓を囲む姿をみて悠彗が、
各々が人に導かれて進むべき道を見つけたように、
曖奈の姿に感銘を受けた慕は、
仲間と力を合わせ、あの舞台に立ちたい。と、牌にかける新たな強い意志が芽生える。
かけがえのない友と、多くの出会いを経て、

森脇曖奈という道標により“遠い日の約束” が大成するわけです。
そして一年後―。
凛とした面持ちと、心から麻雀が好きな笑顔とを併せ持ち、
かつて曖奈がみせた輝きを纏う18歳の彼女がステージへと向かう。
共に過ごして8年、
その姿を見つめる耕介は、自身の親の役目に終りが近付いていることを悟るのでしょう。

全ては「if」の未来に過ぎませんが、
曖奈の行く末を考えると、
立先生が描こうとしている旧約青春麻雀物語の片鱗が見えた気がしました。